第4回「アートに関わる仕事につく」、生き方

アートとともに生きていく、あなたのために。

前回まで、2回続けて「アーティストになる」ことについての質問にお答えしました。

今回は、「アートに関わる仕事につく」ことを考えているみなさんからの質問にお答えしていきます。

すでにお話した通り、大学卒業後、アーティストの道を歩み続ける人に比べて、何らかのかたちでアートに関わる仕事についている人のほうが、はるかに多いのが現状です。実際に、キャリア支援室にも次のような質問が寄せられています。

「アーティストや演奏家ではないけど、現場には関わっていきたい。どうすればいい?」

アートの世界は「アーティスト」だけでは成立しません。アーティストが活動できる舞台は、アーティスト以外の人達が作り、支えることによって維持されています。

ですから、この質問者さんのような方たちが、自分の能力を活かせる現場を見つけ、活躍してゆくことが、アートの世界を豊かにしていくことに直結します。

では、そのような「現場」はどこにあるのでしょうか。

美術の世界では、美術館の学芸員やギャラリスト、キュレーター、アートディレクターといった職業はよく知られているでしょう。展覧会の設営などを請け負うプロのインストーラーや、大きなプロジェクト全体を管理するプロジェクトマネージャー、制作進行といった人たちも、欠かすことの出来ない存在となっています。

当然ながら、これらの仕事はプロフェッショナルなものです。決して、一朝一夕で身につくような職ではありませんし、人によって向き不向きがハッキリあります。

なので、できるだけ早いうちに、現場に入って働いてみることをオススメします。ギャラリーであれば、インターンや期間限定のバイト、お手伝い募集があるでしょう。インストーラーも、アルバイトで入ってがんばっていれば、先輩たちからたくさんのことを学べるでしょう。地域のアートプロジェクトや芸術祭のボランティアスタッフを経験するのもいいかもしれません。

アートに関わる仕事につくには、まずはその仕事に対する理解と、プロフェッショナルな意識が大切だと思います。

「すでにある「アートの仕事」の中に入っていくか、アートの現場で勉強したことを他の仕事のなかで活かして、アートに開いていくか、悩んでいます」

これは少し具体的な悩みですね。

おそらく、美大や芸大を出て、ある程度アートの現場を経験している人であれば、既存のアートの仕事に関わることはそこまで難しくないでしょう。しかし、アートの仕事は数も少ないですし、金銭的にも不安定です。

一方、それ以外の仕事も視野に入れるのであれば、当然、選択肢は広がります。アート以外の仕事に就きながら、むしろそこから「アートに開いていく」というヴィジョンは魅力的です。

しかし、現実はそこまで融通の効くものではないでしょう。

就職活動を経験したことのある人なら誰でも知っているように、どんな仕事であれ、就職するのは大変です。もし質問者さんが、アートの仕事からも、それ以外の仕事からもオファーを受けていて、どちらも条件が良く悩んでいる、というのであれば話は別ですが、そうでないのなら、自分がそこに居たいと思える職場、やりたいと感じる仕事を選ぶべきです。

いずれにせよ、最終的にはあなたの意思だけで決まるのではなく、「仕事から選ばれる」「職場から求められる」ことによって決まっていくのだと思います。

「地方でオルタナティブスペースを作りたいと考えていますが、どうすればいいでしょうか?企業に勤めてノウハウを学ぶべきでしょうか?だとすれば、どういう業種がいいのでしょうか?」

とても夢のある相談ですね。

オルタナティブスペースが国内のアートシーンに定着してずいぶん経ちますし、ノウハウや人材の蓄積も十分にあるので、そこまで構えなくてもよいのではないかと思います。

たしかに、スペースの運営には事務能力や経営的な知識も必要となるので、そういった経験があるに越したことはないでしょう。その意味では、企業での勤務経験は大いに武器になります。

ですが、実際には学生だけで運営しているスペースや団体も多いですし、よほど大規模な計画でなければ、独学でできないことはないと思います。

それよりも、まずはあなた自身が、どのようなスペースを作りたいと思っているのか、そしてその運営のなかで、どのような役割を果たしたいと思っているのかを、具体的に考えてみることからはじめましょう。それによって、必要となるスキルや知識が何なのか、少しずつ見えてくるはずです。

いっそのこと、小さなスペースをはじめてみてはどうでしょう。

もしあなたがまだ学生なら、仲間と共同でシェアアトリエをはじめてみるとか、その一角を小さなギャラリーにしてみるとか、やろうと思えばすぐにできると思います。

もしあなたがすでに社会人になっていたとしても、週末だけ、どこかのオルタナティブスペースのお手伝いをしてみたり、仲間を集めて小さなスペースを運営したりすることは、決して難しいことではありません。

あれこれ頭の中で悩むよりも、まずはアルバイトでもボランティアでも、現場に入ってみることが一番の近道だと思います。


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